筑波大学研究基盤総合センター

低温部門概要

低温部門の概要
 

 私たちが生活している「常温」といわれる温度は、絶対温度目盛りで約300K(ケルビン)です。それでは、常温の100万倍の高温は3億度Kです。3億度Kは、核融合の起こる世界です。一方、常温の100万分の一の低温は3マイクロKです。現在の最先端技術では数マイクロKの超低温を作り出すことが出来ます。このことは、「低温の世界」が核融合に匹敵するくらいの広い、大きな世界なのです。通常、およそ100K以下の世界を「極低温」といっております。極低温の世界では金属の電気抵抗値がゼロとなる超伝導現象が現れ、液体ヘリウムが超流動を起こしその粘性がゼロとなり、あるいは半導体の界面で普遍定数だけで決まる一定の電圧が現れる量子ホール効果が観測されるなど、応用面でも、基礎物理学の面においても重要な現象が起きています。

 研究基盤総合センター低温部門の前身である筑波大学低温センターは、筑波大学の開設計画に従い今から40年ほど前の1976(昭和51)年に学内の共同利用の研究センターとして設置されました。設置目的は、「低温発生器機等の設備を適切に管理し、低温を利用する研究及び教育の場として機能するとともに、低温寒剤の生産及び供給並びに低温関係機器の改善・開発を行う」というものです。2004年4月に筑波大学が法人化され、これに伴い低温センターは研究基盤総合センターの低温部門として引き継がれました。
 低温部門には二つの大きな使命があります。一つは、液体ヘリウム(1気圧下の沸点は4.2K)、液体窒素(1気圧下の沸点は77K)、に代表される低温寒剤を学内に供給するという、いわば「研究支援センター」としての役割です。みなさんが氷やドライアイスを使って簡単にものを冷やすように、低温寒剤といわれる液体ヘリウムや液体窒素を使って物質を4.2Kや77Kに冷やすことが簡単に出来るからです。もう一つは、超低温・強磁場に代表される大型の低温機器を研究者のみなさんに使ってもらえるように共同利用に供するとともに、低温部門自身も低温に関する研究を行うという「研究センター」の側面も持っております。

 低温部門の前身である低温センターは、1978(昭和53)年に液体ヘリウムと液体窒素の供給を開始しました。それ以来、筑波大学が出来上がり、そして発展するとともに低温部門としても順調な歩みを記録して参りました。低温寒剤は、今や理工学の低温における研究に利用されるばかりでなく、生体の凍結保存、核磁気共鳴装置、MRI装置など生物学、化学あるいは医学の分野にまで広く利用されています。私たちの推定では年間1万人以上の人が利用しています。低温寒剤供給に対する私たちのモットーは、「必要なとき、必要な量を、より安い料金で、安全に利用していただく」というものです。幸い、利用者のみなさんのご協力もあって全国の大学の中でも、このモットーに一番近い所にいるようです。

 研究センターの側面から見れば、10mK以下の超低温(常温の約10万分の一の温度)が実現できる3He-4He希釈冷凍装置や静磁界で19テスラを発生することが出来、試料の温度を1Kから300Kまで自由に変えられる強磁場装置、あるいは量子干渉素子(SQUID)を利用した磁化測定装置など特色のある大型機器を学内共同利用に供してきました。これらの装置を利用した研究者のみなさんが、大きな成果を上げ、数多くの賞を授与されるなどの実績を上げてきました。また、低温部門自身も第二音波の伝達特性、銅酸化物高温超伝導体の特性、窒化鉄の磁化特性などの諸研究において多くの成果を上げてきました。

 このほか、低温部門では低温容器の再検査場としての認可を受け、学内で利用されている液体窒素容器(100台以上ある!)の再検査を行っております。さらに、低圧逆止弁や液体ヘリウムの液面測定器をユーザーのみなさんに供給するなどの「低温技術サービス」を行っております。

 私たち研究基盤総合センター低温部門は、「顔の見えるセンター」としてその使命を果たすとともに、その便利さのあまり空気のようにその存在を忘れてしまうような「顔の見えなくなるセンター」をも目指しております。そしてこのためには、私たち低温部門と利用者のみなさんの間での「顔と顔を合わせての(face-to-face)会話」というものが大切になってくると考えております。

 


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